海外特許制度の改正に関して、当事務所が独自に集めたニュースの抜粋情報です。
1.米国 最高裁が機能で特定された抗体に係る特許クレームを実施可能要件違反と判決
米国連邦最高裁判所(最高裁)は、2023年5月18日、血中LDLコレステロール値を低下させる抗体に関し、明細書で特定された抗体例よりもはるかに多くの抗体例を包含するクレームを実施可能要件違反とする判決を下しました。最高裁判決は、特許権者(Amgen社)と侵害被疑者(Sanofi社)との間で争われている特許侵害訴訟に係るもので、実施可能要件違反の判断を下した連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)の判決を支持したものです。
2.米国 特許・商標関係の将来的な庁手数料改正原案を公表
米国特許商標庁(USPTO)は、2023年4月20日ならびに2023年4月27日付け連邦官報のそれぞれにおいて、特許(発明・意匠・植物)関係ならびに商標関係の将来的な庁手数料改正原案について、特許・商標の各諮問委員会による公聴開始を公示しました。USPTOは、今後、各諮問委員会の審問、規則改正案の公表と意見募集、最終改正規則の公布といった手続を進めます。特許関係庁手数料の改正は2025年1月から、商標関係庁手数料の改正は2024年11月から適用する計画となっています。
3.欧州 単一効特許制度の運用開始のために必要となる情報を集成した公報補足版を発行
欧州特許庁(EPO)は、2023年5月2日、単一効特許(UP)制度(2023年6月1日施行)に関連するEPO長官決定や通知などを集成した公報補足版(Information on practice and procedures before the EPO relating to the European Patent with unitary effect)を発行しました。
4.欧州 出願後提出の効果を示す証拠の採用に関する拡大審判部審決をうけて関連出願の審査を再開
欧州特許庁(EPO)は、2023年5月2日、出願後に提出した証拠により効果を証明することに関係した出願(異議申立に係属中のものも含む)の手続停止を解除し、手続を順次再開することを通知しました。
5.英国 控訴院が発明の有用性の「もっともらしい」判断において欧州特許庁拡大審判部審決を評価
英国控訴院(The Court of Appeal)は、2023年5月4日、血栓塞栓性疾患の治療に有用であるとする化合物の特許クレームについて、一審が、出願時明細書にその有用性(効能)を「もっともらしい、真実らしい(plausible)」と思わせるだけの開示がないことを理由に無効としたことに誤りはないと裁決しました。この裁決において、控訴院は、欧州の国内裁判所として初めて、欧州特許庁(EPO)拡大審判部が「もっともらしい」要件を検討した審決(G 1/21)の妥当性を評価しました。
6.フランス 産業財産庁年次報告書2022を発行
フランス産業財産庁(INPI)は、2023年3月27日、特許・意匠・商標の動向を含む年次報告書2022を発行しました。
7.ドイツ 2022年知的財産年次統計を公表
ドイツ特許商標庁(DPMA)は、2023年3月30日、特許・実用新案・意匠・商標について、2022年年次統計を公表しました。
8.台湾 WIPO標準ST.26に準拠したXML形式配列表の中国語翻訳要件を緩和
台湾経済部知慧財産局(TIPO)は、2023年4月25日、発明専利出願において世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.26に準拠したXML形式の核酸/アミノ酸配列表を提出する場合、その中国語翻訳要件を大幅に緩和することを通知しました。本通知は、即日に発効となっています。
9.WIPO 特許紛争に関係する世界各国の特許制度や司法制度の情報を掲載したガイドを発行
世界知的所有権機関(WIPO)は、特許紛争の頻度が高い国/地域の各々について、特許制度や手続、特許紛争に絡む司法制度や手続、などに関する情報を包括的にまとめたガイド(An International Guide to Patent Case Management for Judges)(HTML版/PDF版)を発行しました。
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