海外特許制度の改正に関して、当事務所が独自に集めたニュースの抜粋情報です。
1.米国 特許付与後当事者系レビューの審理における「出願人が自認した先行技術」の取扱指針を改訂
米国特許商標庁(USPTO)長官は、2022年6月6日、特許審判部(PTAB)に対し、特許付与後当事者系レビュー(IPR)における『出願人が自認した先行技術(applicant-admitted-prior art:AAPA)』の取扱いについての改訂指針を示しました。改訂指針は、特許法311条(b)がIPR提起を特許または印刷刊行物からなる先行技術にもとづく場合に限るとしているのに対し、AAPAを用いることをどの範囲で認めるかについて明確にするものです。旧指針(2020年8月18日付け"2020 Guidance")は廃止されました。
2.米国 公正、合理的かつ非差別的条件でのライセンスを宣言した標準必須特許に関する過去声明を撤回
米国特許商標庁(USPTO)、米国国立標準技術研究所(NIST)、司法省反トラスト局(DOJ)は、2022年6月8日、『公正、合理的かつ非差別的(FRAND)条件でライセンスすることを宣言した標準必須特許(SEP)の救済に関する2019年政策声明(2019年政策声明)』を撤回する旨の共同声明を出しました。
3.米国 温室効果ガスの排出削減に係る特許出願の審査順番を繰り上げる試行プログラムを開始
米国特許商標庁(USPTO)は、2022年6月3日付け連邦官報に、温室効果ガスの排出削減に係る特許出願の審査順番を繰り上げるために、「気候変動緩和試行プログラム(Climate Change Mitigation Pilot Program)」を開始することを公示しました。USPTOは、優先審査の申請を、2022年6月3日から2023年6月5日までの期間、1,000件を上限として受け付けます。
4.米国 核酸/アミノ酸配列表の提出形式をWIPO標準ST.26に準拠した仕様に変更(続報)
米国特許商標庁(USPTO)は、2022年6月9日、核酸/アミノ酸配列表提出形式のWIPO標準ST.26仕様への変更に合わせ、関連情報を集約した専用Webページ(Sequence Listing Resource Center:SLRC)を開設したことを公表しました。
5.米国 AIAレビュー特許審判部決定を長官が再審理する暫定手続について(続報)
米国特許商標庁(USPTO)は、2022年5月26日、特許付与後レビュー手続(AIAレビュー)における特許審判部(PTAB)の決定について、PTAB内部回覧/評価の暫定手続、および、長官再審理の暫定手続の具体的内容を公表しました。USPTOは、今後、ユーザなどからのフィードバックを求め、正式な手続として制定を図るとしています。
6.米国 意匠特許の「製造物品要件」に関する意見募集の結果を公表
米国特許商標庁(USPTO)は、2022年4月21日、意匠特許の「製造物品要件」に関する意見募集の結果をまとめた報告書を公表しました。この意見募集は2020年12月21日から2021年2月4日までの間に行われたものです。
7.欧州 Euro-PCTガイド 15編 2022年1月版を公表
欧州特許庁(EPO)は、2022年5月30日、PCT出願に関するEPO国際段階手続と国内段階手続のための出願人向けガイド(Euro-PCT Guide)15編2022年1月版を公表しました。ガイドは、EPO公用語(英語、独語、仏語)で、HTMLとPDFの両方の形式で公表されています。
8.中国 核酸/アミノ酸配列表の提出形式をWIPO標準ST.26準拠に変更
中国国家知識産権局(CNIPA)は、2022年6月10日、核酸/アミノ酸配列表の開示を含む専利出願について、配列表の提出形式をWIPO標準ST.26準拠XML形式に変更することを公示しました。変更は、2022年7月1日以降にCNIPAに提出される中国専利出願またはPCT国際出願に適用されます。
9.中国 2021年度国家知識産権局年報を公表
中国国家知識産権局(CNIPA)は、2022年6月1日、2021年度年報(2021年1月から2021年12月まで)を公表しました。
10.韓国 侵害行為者の刑事訴追に関するデザイン保護法と実用新案法の一部改正
韓国特許庁(KIPO)は、2022年6月9日、デザイン権や実用新案権の侵害行為者に対する刑事訴追要件を緩和するため、デザイン保護法と実用新案法の一部改正が行われることを通知しました。これら改正は、2022年6月10日に公示され、同日施行されました。
11.台湾 核酸/アミノ酸配列表の提出形式をWIPO標準ST.26準拠に変更
台湾経済部知慧財産局(TIPO)は、2022年6月6日、核酸/アミノ酸配列表の開示を含む発明専利出願について、配列表提出形式をWIPO標準ST.26準拠XML形式に変更することを公表しました。変更は、2022年8月1日以降の出願に適用されます。
12.台湾 専利法、商標法などを一部改正
台湾総統府は、2022年5月4日、太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)への加盟促進のための専利法・商標法などの一部改正を公布しました。専利法改正は、2022年7月1日から施行されることが公示されました。
13.カナダ 特許審査手続における不要な遅延を避けることを目的とする特許規則の改正
カナダ枢密院(Privy Council)は、2022年6月3日、特許規則改正を公示しました。改正は、核酸/アミノ酸配列表提出形式のWIPO標準ST.26への変更、手数料表の変更を含む59項目に及びます。配列表提出形式変更に係る規則は2022年7月1日に発効し、他の改正規則は2022年10月3日に発効します。規則改正は、カナダ-米国-メキシコ協定(CUSMA)によって医薬品に関する特許存続期間の延長が求められることに対応し、特許審査手続における不要な遅延を避けることを目的としています。
14.チリ 産業財産法などの改正法を施行
チリ産業財産庁(INAPI)は、2022年5月9日、産業財産制度を近代的な制度に変革するために産業財産法(LAW No. 19,039)と産業財産庁設立法(Law No. 20,254)を改正する法律(Law No. 21,355)が同日に施行されたことを公表しました。改正法の施行に合わせ、「商標および特許の手続のための実務ガイド」や「特許審査指針」も相次いで公表されました。
15.国際出願 日本特許庁の手数料改定
日本特許庁(JPO)は、2022年6月1日、円安の影響に伴い、国際出願手数料などの増額を公表しました。改定手数料は、2022年7月1日以降の納付に適用されます。
(文責 外国特許制度グループ)
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